映画ファン注目!~字幕制作の裏とおもて~

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2014年11月13日

映画ファン注目!~字幕制作の裏とおもて~

外国映画を観る時に欠かせない字幕。でも、その制作にどんな苦労があるのか、ご存知ですか? そこで普段はあまり気付かない字幕制作の深イィ話をご紹介します!

映画ファン注目!~字幕制作の裏とおもて~

日本は吹き替えよりも字幕?!

外国の映画を観るとき、画面の字幕はなくてはならないものですね。というより、「あって当然」の感覚です。ところがほかの国々でその国の言葉以外の映画が上映されるときは、ほとんどが吹き替えになるのだそうです。日本は世界でも珍しい国なのでしょうか?

日本は映画字幕大国?!

日本に字幕が普及しているのは、字の読めない人がゼロに近い、つまり識字率が抜群であり、またアメリカのような多人種国家ではなく、日本語を母語とする人が大半を占めるためでもあります。ハリウッド映画の素敵な俳優が演じる個性的な人物が、どこかで聞いたような日本人俳優の声で話すのを想像するといささか興ざめですし、意味がわからなくても、やはり俳優の生の声が聴きたいものです。字幕の役割が非常に重要であることがわかりますね。

字幕制作者とは?

日本の字幕映画第1作は、1930年公開の『モロッコ』です。この字幕を手がけたのが清水俊二さん(1906年~1988年)で、日本の字幕制作者のパイオニアとされています。それまでは映画館には専属の「弁士」がいて、人物の台詞や物語の流れなどを独特の調子で語っていました。『モロッコ』によって弁士の時代は終わりを告げ、字幕の歴史が始まったと言えましょう。

この清水さんのお弟子が、戸田奈津子さん(1936年~)です。フランシス・コッポラ監督が来日したときに通訳を務めたことをきっかけに、『地獄の黙示録』はじめ、『タイタニック』や『スターウォーズ』などの字幕翻訳を手がけました。「字幕の女王」とも呼ばれ、映画字幕に関する多くの著作もあります。

字幕に大切なことは何か?

観客に外国語の台詞の意味を伝えるもの、それが字幕です。だから翻訳がまちがっていると、台詞の意味も映画の内容も正しく伝わらず、作品を味わうことができません。まず台詞を正確に翻訳すること。これが最も重要な条件です。

けれど映画の画面に出る字幕を思い浮かべてみてください。画面の下方か右はじに出ているのは、多くても2行くらいではないでしょうか?そう、映画字幕には文字数と行数が非常に限られているのです。人間がパッと読んで意味が理解できる生理的、物理的な文字数でなければならず、映画の画面を邪魔しないというビジュアル的な配慮も必要になります。そして生まれたのが、「1秒に4文字、1つの画面の字幕は10字×2行」、つまり20文字までというルールです。

これ以上になると、観客は文字を読むのに気を取られて映画に集中できなくなるというのです。ここに小説などの翻訳と映画字幕の翻訳との決定的なちがいがあります。清水氏が「映画字幕では翻訳ではない」との持論に到達したのも無理からぬことですね。

現在では各台詞の秒数を算出する専用ソフトの普及で台詞の秒数は機械が出し、それによって文字数も決まるようになりました。しかし映画輸入会社の宣伝担当から字幕翻訳家に転身した松浦美奈さんは、「台詞の音声は終わっていても、人物の息が続いていたり演技の余韻が残っているときなどは、そこに字幕がほしくなる」と語っています。デジタル化やシステム化が進んでも、生身の人間の息づかいや体温を伝えるには、このような感覚が必要なのですね。

日本映画に英語の字幕をつける

ここでちょっと頭を切り替えてみましょう。世界各地の映画祭には、日本からも多くの作品が参加します。さらに日本のドキュメンタリー映像やアニメ映画は、外国でも広く受け入れられています。外国人の審査員や観客に日本映画を観てもらうためには、外国語字幕がなければならないはずですよね。

日英映像翻訳家・後藤太郎さんはロサンゼルスで生まれ育った日系アメリカ人です。これまでに日本映画の『悪人』や『フラガール』、『大奥』などの多くの英語字幕を手がけていますが、日本では「兄」の1文字で済むところを、漢字のない外国語では「0lder brother」と12文字になったり、主語があいまいな日本語の特徴、方言の活かし方、「いただきます」、「ごちそうさま」の扱いづらさなど、さまざまなご苦労があるようです。

映画を重層的に味わうために

こうなってくると、字幕を有効に使って1本の映画をもっと重層的に味わいたくなりませんか?おすすめの書籍やDVDがたくさんあります。スタジオジブリ作品の『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』はじめ、名作『ローマの休日』など、英語字幕付きの作品は多数販売されています。『男はつらいよ』英語字幕版では、寅さんの「おい兄さん、勘定してくれねえか」が、「Mister、the check」になっていたりなど、もともとおかしくない台詞なのに笑えたりなど、プラスアルファの楽しみがありますよ。