名画座のいま昔~懐かしさと新鮮さを求めて~

映画館まっぷ
  1. 名画座のいま昔~懐かしさと新鮮さを求めて~
2014年11月13日

名画座のいま昔~懐かしさと新鮮さを求めて~

デジタル化とシステム化が進む映画業界で、今も変わらず名作映画を伝導師として頑張っている名画座。その歴史と現在、さらには未来について考えてみましょう。

名画座のいま昔~懐かしさと新鮮さを求めて~

名画座のイメージは?

「名画座」ということばから、どんなイメージが思い浮かびますか? 町の片隅にある古ぼけたビルにあって、座席は固くてあまりきれいでないお手洗いで、けれど個性的な館主がいたり、名画座の存在じたいが一篇の映画のような、そんなイメージでしょうか? デジタル化とシステム化が進む映画業界において、変わらないことを潔しとしながらも、名画座ならではの魅力を日々模索している映画館は少なくありません。名画座の歴史と現在、さらには未来について考えてみましょう。

名画座とは?

映画館を大ざっぱにカテゴライズしますと、国内外の新作をつぎつぎに上映する「封切館」、複数のスクリーンを有する「シネコン」、独自のポリシーで営まれている「単館系・ミニシアター」などがあります。「名画座」とは、封切館やシネコンでの上映が終わった作品や、過去に上映された作品を安い入場料で上映する映画館のことを言います。

いまでこそほとんどの映画館が各回完全入替制の全席指定を導入していますが、名画座には自由席で入れ替えなしの、昔ながらのゆるやかな運営が残っているところもまだまだあります。さらに映画を二本立て、三本立てで安い料金で見られたり、途中出入りしながら一日中過ごせたりするのが大きな魅力です。

どんな名画座があったのか?~過去の名画座~

まずは東京の名画座を中心にご紹介しましょう。残念ながら閉館してしまいましたが、忘れてはならないのが銀座の並木座と銀座シネパトスです。

並木座は、東京・銀座の並木通りにあった邦画を専門とする屈指の名画座です。多くの映画ファンが足しげく通う老舗的な存在でしたが、建物の老朽化などを理由に、1998年惜しまれながら閉館しました。

同じく銀座シネパトスは、晴海通りを横切るように作られた3つの映画館を指し、封切のロードショーや単館系作品、ほかの映画館で終了した作品の「ムーヴオーバー」上映などを並行しておこなうユニークな運営とともに、映画館のある地下街の不思議な雰囲気も魅力的でした。こちらも地下街の耐久性の問題で2013年に閉館しています。

名画座の抱える問題~現在の名画座~

ほかにも2014年夏には三軒茶屋シネマ、新橋文化劇場、ロマン劇場が相次いで閉館し、名画座をめぐる状況はますます厳しくなるものと思われます。名画座の多くが建物の老朽化と耐久性に問題を抱えており、建て替えてリニューアルオープンするには多額の費用がかかります。

ただでさえレンタルビデオやDVDの普及、衛星放送やネット動画などによって、わざわざ映画館に足を運ばなくても、自宅で気軽に映画が楽しめますし、同じ行くなら話題作がいろいろ選べて、設備の整ったシネコンに人々の目が向くのもいたしかたないことでしょう。

また独自のポリシーで運営することにも限界があり、後継者がないためにやむなく閉館したところもあります。
名画座は便利、効率、気軽といった現代人の好みには逆行するものかもしれません。

がんばれ!名画座~さまざまな取り組み~

しかしながら「名画座の灯を消さないで」というファンの声に応えようと「名画座でしかできないことをやろう」と奮い立つ名画座も少なくありません。新しい名画座のあり方を模索している映画館を、いくつかご紹介しましょう。

飯田橋駅前にあるギンレイホールでは2014年秋、70年代を中心とする名作の連続上映とともに、関係者を招いたトークショーや全国各地の名画座の写真展や映画看板の展示会が開催されました。名画座をめぐる特別映画祭といった趣でしょうか。年間1万円で好きなだけ映画をみられる「シネパスポート」のシステムを導入したのもここギンレイホールで、いまでは数千人の会員があるとのことです。自分たちが映画を楽しむと同時に、「自分たちがこの名画座を支えているんだ」という観客の意識が、名画座をますます輝かせるのではないでしょうか。

名画座の役割は名作の上映をするだけではなく、古くからの映画ファンを大切にし、同時に新しい映画ファンを生みだし、育てることでもあります。そこで気を吐いているのが、東京・杉並にあるラピュタ阿佐ヶ谷です。石や土や古材などで作られた建物には一風変わった風合いがあり、映画館のほかに地下は小劇場になっており、若い演劇人たちが腕を競っていますし、ギャラリーや本格的なフランス料理店もあります。わずか50席ながら、背もたれが高くてゆったりした座席は居心地のよいものです。名画座には独特の閉鎖的な空気があって入りにくいと敬遠する方も、まずはギャラリーで写真や絵画をみたり、お茶や食事を楽しむところから入ってみてはいかがでしょうか?

デジタル化により新作のフィルム配給が困難になったとして、週末だけの名画座に路線変更したというユニークな映画館もあります。東北・秋田市にある週末名画座シネマパレは、毎週末金土日に35mmフィルムで名作映画を上映しています。作品は国内外問わず過去の名作はもちろん、上映機会の少ないレアものやB級カルト作品や、2014年10月には「秋田ゆかりの映画特集」において、秋田県出身の怪獣が登場する映画が上映されました。館主の個人アカウントのツイッターには、「当館では11月末まで暖房なしなので暖かくしてお越しを」と、半分冗談のようなメッセージもありますが、その分映画ファンの熱気に溢れているのではないでしょうか?

建物は古いのになぜか新鮮、懐かしいけれど、めっぽう刺激的。そんな名画座の魅力が伝わったでしょうか? 映画ファンなら、好きな監督や俳優だけでなく、「お気に入りの名画座」、「行きつけの名画座」を持ちたいものですね。